顕微授精法(ICSI)
①精子数がかなり少ない場合
精子数が1000万/ml以下と精子減少症の場合
②精子の運動率が悪い場合
精子の運動率が30%以下と悪い場合
③妻側の抗精子抗体がある場合
妻側に抗精子抗体(ASA)がある場合、体外受精でも受精が可能とされていますが、ICSIの方が安全です。
④1回目の体外受精で受精率が悪い場合
精子の数、運動率が一見良好でも充分受精が起こらない場合があります。これを受精障害と呼びますが、この受精障害が疑われたら2回目はICSIが安全です。
卵巣刺激法→モニタリング→採卵法は体外受精と全く同じです。受精の方法だけが異なります。
採卵した卵を細いピペット(ホールディングピペット)で固定し、その反対側からさらに極細のピペットの内に夫の精子を一匹吸い取り、固定された卵の細胞質内に注入する方法です。
これを顕微鏡で見ながら行うので顕微授精法と言われますが、正確には卵細胞質内精子注入法(ICSI)と呼ばれます。
最近では受精率は体外受精とほぼ同じかやや低い程度です。
胚凍結保存法
①体外受精法の項目で既に説明しましたが、調節卵巣刺激(COS)を行って採卵すると卵が多く採れる一方、卵巣から多量の卵胞ホルモン(エストロゲン(E2))が分泌されます。
この多量の卵胞ホルモンが子宮内膜に作用し、卵の着床にとって好ましくない環境が形成します。
これを避けるため採卵した周期の移植を見合わせ、次の周期の自然に近いホルモン環境で移植を目指します。
②余剰胚がある場合。
③採卵した周期で子宮内膜が薄く着床が期待できない場合。
④卵巣刺激で卵巣が過剰に反応し、卵巣が腫れる(卵巣過剰刺激症候群(OHSS))の場合、そのまま移植して妊娠するとOHSSがさらに加速されるのでこれを避けるために胚を凍結します。
体外受精、顕微授精による妊娠率
通常、体外受精と顕微授精、これに胚凍結法を合わせて補助生殖医療(ART)と呼ばれます。
ARTの成績の出し方はいろいろありますが、一般的な方法は胚移植あたりの妊娠率で表されます。
図 は当クリニックの最新のデータです。なお移植された胚は全て凍結胚です。
すなわち図上の39歳未満の人では3日目の胚(初期胚)の一回あたりの妊娠率は27.3%でした。
一方胚盤胞移植では69.3%でした。
同様図下の40歳以上の方では初期胚22.2%、胚盤胞34.0%の妊娠率でした。